第21話 【嘘と誠と幸せと】

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雪菜さんの事故にそんな事実が隠されていたなんて…… その事故の後、幼い咲菜ちゃんを抱え、先生がそんな苦しみに耐えていたなんて…… 家事をする家政婦としてでは無く、咲菜ちゃんの母親代わりでも無く、 初めから一人の女として、私を必要としてくれていたの? 私はずっと、あなたの言葉が欲しかった。 『おまえだけを愛してる』―――今度こそ、あなたの言葉を信じても良いの? 「ずっとその言葉を聞かせて欲しかった。……雪菜さんの事もそう。どうして、今まで本当の事を話してくれなかったの?半年もの間、ずっと側に居たのに」 涙で彼の顔が霞んで行く。 頬を伝って流れる涙を指で拭い、彼の目を見つめ声を震わせる。 「俺が麻弥にした事を、同情を買って雪菜のせいにはしたくなかった。…って堂々と言えたなら、それはそれで言い訳の一つになるんだろうけど。『妻に愛想尽かされて浮気された』なんて、カッコ悪くて言えないだろ?」 「カッコ悪いって……それが理由!?」 自嘲する彼を見て声を裏返した。 「大切な事ほど、一度タイミングを逃すとなかなか言えないものだ」 「でも、知らないのは私だけだった。香川さんだって、本当の事をみんな知ってるのに」 「香川さんか……彼女は、雪菜の唯一の相談相手だったからな。真実を知っているからこそ、彼女もこの三年間苦しみ続けて来た。知っていながら、雪菜の浮気を止めることが出来なかったと……」 彼は静かに視線を下ろし、表情に悲しげな色を塗る。 ―――知っていながら、雪菜さんの浮気を止めることが出来なかった? 頭の中でリピートさせたその瞬間、とりとめのない大きな違和感が走り抜けた。 「もしかして……その不倫相手とはSNSで知り合った?」 「……ああ、そうだ。なぜ麻弥が知ってる?」 彼は少し驚いたような顔をして、眉根を寄せる 雪菜さんの浮気を止める事が出来なかった?だからずっと苦しみ続けて来た?
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