退廃

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退廃

私は幼い頃、必死で自身を空間に融かそうとしていた。 自分と空間の間にできる、私自身に沿ってできる"黒い線"がたまらなく嫌だったのだ。 母は訳のわからない事を言うなと泣いた。 私は。 気持ち悪くて気持ち悪くて、仕方がなかった。 紙の上に手の形を書く。 鉛筆で5本指の手の形をなぞればそれは手になる。 手を描いたことになる。 私は"物質"としての私が嫌なのだ。 空間に融け出してしまいたかった。 紙 は白いままでいいのだ。
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