欠陥人間

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「でも、人間は違う。本能だけではなく、人格があり感情がある。」 異質なものに、惹かれる。 「それでも、大多数が言う¨普通¨から外れた少数は、普通ジャナイって言われるよ。」 彼女の声が空に溶ける。 頭を上げると、月が歪み、黒い空に滲み出している。 「これは…」 僕が生唾を飲み込むのを見て彼女は笑った。 「私たちは、どっちだろうね。」 山が唸る。 あたりの木々は、まるで磔刑されたキリストのように、枝を横に伸ばして悲痛な顔でただそこに立っている。 しっとりと、冷たい空気に視界が歪み、足元の闇が僕を生ぬるい、心地よい暗闇へ引き摺り込んだ。 「これは、君の夢の中か。」 僕の問に、彼女は笑う。 「違うよ。」 私の見ているセカイだよ。 暗闇が、頭からすっぽりと、僕を飲み込んだ。
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