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「よし、じゃあもう一回だ」
「よしいいだろう。
だが代わりにお前の首を切り落とす」
もう一回同じ攻撃を受けると聞いて本気で怒っているネイム。
怒鳴りこそしないが、本気で怒っている。
先ほどまで静かだったこの空間に打ち付ける様な風が吹き始めたが、おそらくこれがネイムの怒りを表現しているのだろう。
そしてその怒りに呼応しているのか、先ほどまで無反応だった王金の宝剣にも鈍い光が灯る。
「む……」
そしてそのことに気付いたネイム
今までのやり取りが全く無駄ではなかったのだと証明され、すこしばつの悪そうな顔をする。
「別にふざけてるわけじゃないことは理解してもらえたか?」
「……分かりにくいんだよお前は」
「一応言っておくが、もう一回ってのは嘘でもないが次はその宝剣にだ。
さっきみたいにお前に負担はかからないはずだぞ」
「それを先に言え」
「というわけでもう一回――」
『その必要はありません』
「は?」
どこからか聞こえてきた声。
「っ!!」
視界が暗転したかと思えば、ネイムは気が付いた時には天地が逆転したような空間にいた。
足元には水面があり、その奥には無限に広がる夜空が見える。
そして上を見上げると、揺らぐように、そしてほの暗く先が見通せない水底のような闇が広がっている。
「……ネイム、みんないない」
「え?」
サクラの声に周囲を見回すネイム
すると、先ほどまでいたはずの眷属+αの七人の姿がどこにもない。
この空間にいるのは、ネイムとサクラだけとなった。
『ここに入れるのは、我がミツルギの縁者のみ……つまり、王族のみ。
それ以外の者は入れなくて当然です。
……そこの魂は、あなたと深いつながりがある故に入れたようですがね』
「……王金の女神か?」
声の主は、それ以外に考えられなかった。
ただ、姿が見えない。
声は確かに聞こえるのだが、この空間全体から声が響いているような気がして、ネイムはその姿を捉えることができなかった。
『なにか懐かしい感覚がするかと思えば……あの子の力を感じますね』
「……白夜のことか?」
『ええ、そう呼ばれているわね。
でも、意外だわ。
あの子は人間のこと、凄く嫌っていたし……何より、私のミツルギのことは特にひどかったから、その血縁であるあなたをミツルギにするなんて……一体何があったのかしら?』
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