14930人が本棚に入れています
本棚に追加
ネイムは意識のないミホシを先ほどまで自分が寝ていたベッドに寝かせ、人気のないテラスに出る。
「わかってはいたことだが……簡単じゃないか」
王金の女神の加護が刻まれた右手
白夜の女神の宝剣が変異した左手
その二つを持つ今のネイムには二つの選択肢がある。
だが、どちらを選んでもネイムが、そしてネイムに道を示してくれた者たちが望む未来にはたどり着けない。
「力はこれで対等になった。
なら後は、どうすればいい?」
ネイムのその言葉に、答えてくれるものは誰もいなかった。
「どうすれば俺は……お前の家族に戻れる」
思い浮かぶのは、たった一人の弟
「何をしたら俺は、王として正しくいられる」
自分と共にあるために貴族として立ち振る舞い続けた芯の強い少女を想いかべる。
「俺の願いは、本当に叶えられるのか」
いつも自分のそばにいて、支えてくれた少女を想いかべる。
だが今はもう、彼の傍らには誰もいない。
「これ以上……何も失いたくないんだ。
それでも前に進むのに……俺は何を切り捨てる必要があるんだ」
ただ静かにネイムを見守るかのように月明かりが彼を照らす。
その表情には、わずかながらとはいえ、絶望の色が見えた。
最初のコメントを投稿しよう!