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「らんらららんら~ん♪」
村を出て山を少しばかり下ってのどかな山道を、セリは鼻歌を歌いながらスキップをして戦闘を歩く。
「セリちゃん、ちょっと、もうちょっとゆっくりっ」
「……子供は元気だな」
その後を、杖を突きながらネイムはついていき、そしてそんなネイムをマルタが支えている。
「マーちゃん、ネイム~、早く早く~!」
ぴょんぴょんと元気に飛び跳ねながら大きく手を振るセリ。
その様子に、マルタは苦笑する。
「……なんだか、孤児院にいた時のことを思い出しちゃうね」
「……そうだな」
リーネル孤児院。
ネイムも長い間あの孤児院で過ごしていた。
特に騎士養成学校を卒業してからは下宿先として活用していた。
基本的には弟子であるショウとの交流が中心だったが、それだけ長く生活していれば当然他の子どもたちとの交流も広がる。
「……マリアちゃん、今どうしてるのかな」
不意に、マルタがそんなことを呟いた。
「……すまん」
ネイムはそんな言葉を吐いてしまう。
もしマルタ一人だったら、とっくにそのようなことはわかっていたことだろう。
「あ……私別に、そんなつもりじゃなくて……」
「……ああ、わかってる。
……すまん」
ネイムは自分でも卑屈になっているなと実感して、申し訳ない気持ちで一杯になる。
「っ…………」
これほど近くにいるのに、ネイムに対して何もできない。
そんな事実が、マルタの胸を締め付ける。
「おーそーいー!!」
そんなところに、セリが乱入してきた。
そしてセリはあろうことか、ネイムの右腕を掴んだ。
「なっ――お、おいっ」
「はやくいこうよー!」
ブンブンとセリが引っ張ってくる。
それでネイムがつんのめりながらもどうにか転ばない様にふんばる。
「セリちゃん、危ないからひっぱらないで」
「えー……でもマーちゃん、時間無くなっちゃうよー」
明らかに不満気な様子のセリ。
「……わかった、もう少し早く歩くから引っ張るな」
やれやれと、嘆息交じりだがネイムはそう答えたのだ。
「ホント?」
「ああ」
「じゃあ競争しよっ!」
「無茶言うな」
セリの無茶ブリに対して思わず突っ込みを入れてしまうネイムである。
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