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山が揺れた。
その事実に、コーテスは大騒ぎとなっていた。
あまりに巨大な揺れに変異種の対処に向かっていた男衆も村に戻ってきた。
幸い、村の方では棚に置いてある皿が落ちた程度の被害しかなかったのだが、村の中の雰囲気は厳戒態勢だった。
「…………」
そんな中、テューダルは呆然と切り株に座って俯く。
他の男たちも、敢えてテューダルには触れずに周辺の警戒に当たっている。
「ねぇ、マーちゃんとネイムはー?」
ふと、村の一角で集まって会議している大人たちにセリがそんな言葉を投げかけた。
「そうだよ、マルタちゃんはどうしたんだい?」
「マルタちゃんがいないんだけど」
女たちは口々にマルタの心配をする。
一方で、先ほどテューダルに対してのマルタの行動を知る男たちは目線を逸らす。
「ちょっと、なんで黙ってるのよ!」
「い、いや落ち着け。今はそれどころではなくてだな」
大人たちはそのまま言い争いを始める。
「……おい、誰かこっちにくるぞ」
村の正面で警備に当たっていた男がそう言ったので、瞬間的にセリはその方向を見た。
「――あ」
そしてセリは気が付いた。
「ネイム、マーちゃん!」
セリのその言葉に、その場にいたすべての者たちが視線を向けた。
テューダルまでも、その言葉に反応して顔をあげる。
そして、その場にいた誰もがその姿を確認した。
村の殆どの者が顔も見たことが無い男が、もはやこの村の住人と言っても良いよそから来た少女を背負いながら歩いてくる姿を。
「……な、なに、あの男?」
そして恐怖した。
少女を――マルタを背負っている男の左腕は人の腕ではなく、金属光沢を放つ白銀の義手であることに。
あまりにも異様。
未知から来る恐怖に誰もが言葉を発せず、しかし、マルタの姿を確認した以上それを背負っている男を村に入れることも拒否はできない。
男はマルタを背負ったまま村の中へと入り、自分たちに視線を向けてくる村人たちを見る。
「……この中に「ネイムー!」――どわっ!?」
男が何か喋り出そうとした途端、セリがその男――ネイムに向かって抱き着いて来た。
思わず体勢を崩しそうになったネイムだが、ギリギリのところで踏ん張る。
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