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先代の宝剣継承者の言葉に従い、ネイムは宝剣とその身を完全に融合させた。
スサノオとは違う一時的なものじゃない。完全にその身体を同化させる方法だ。
ネイム自身も、完全にそれを意識しての実行だ。
だが結果はどうだ?
融合直後は爆発的にアマテラスを増加できたが、結局何もできなかった。
それどころか身体は不自由となり、アマテラスも使えなくなった。
「死ねよ……本当に」
メイリンの顔が、ネイムの脳裏に過る。
最後に、何か夢を見たような気がした。
どんなものであったのかはもう思い出せない。ただ掴んだ手がとても冷たくて……悲しかった。
ネイムの胸中にはぽっかりと穴が開いたように空虚な感覚が今もこびり付いている。
「…………はぁ」
その右手には、小さなナイフが握られている。
マルタには内緒で、小屋から持ってきたものだ。
それを、ネイムは逆手に持って……
「――――っ!」
自分の胸に突き立てる。
――ガンッ!
硬質な物体同士がぶつかり合うような音がした。
「……っ……」
麻痺が残っている右手ではナイフを握っていられずに今の衝撃ですっぽ抜けた。
「……クソが」
ネイムは自分の上着をずらして、自分の胸を確認する。
ナイフを突き立てようとした箇所。
その部分が金属化していた。
だがそれは次の瞬間には普通の肌色に戻る。
「……アマテラスも使えない……体も動かない……その上、自殺すらできない……」
ネイムは目覚めて、自分が何もできないと知った日からこのように頻繁に自傷行為を繰り返している。
だが結果はすべてが失敗だ。
刃物ではその身体は傷つかず、高い所から落ちてもビクともしない。
首を吊っても肉が硬質化して血管も気道も確保されたまま。
後残るは溺死くらいなのだが……
「はぁ……はぁ……!」
息を切らして、マルタがネイムの前にやって来た。
「ネイム……くん…………っ!」
マルタは呼吸を整えながら、ネイムを見てそして足元にあるナイフを見つけた。
マルタはすぐにナイフを拾って、ネイムから隠すように拾う、
「なんで……どうして……?」
泣きそうになるマルタを見て、ネイムは「ああ、またか」と他人ごとのように思った。
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