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そのまま何も話すことはなく、流れで一緒に帰ることになった。
気まずい。菊池さんも、今女子達に悪口言われてるの聞いただろうし、いい気分じゃないんだろうな。
「あの。さっきは、その…私のこと庇ってくれて、ありがとう。」
とても小さい声だった。でも、しっかりと心に届いた。
「で、でもっ」
「?」
「彼女達にも、彼女達の考え方が、きっとあるの。お互いの価値観っていうのがあって、それは…言い争いで変わるものじゃない…。お互いの価値観の押し付け合いで、喧嘩なんてするべきじゃないと思う…の…。」
心にずっしりときた。極度の人見知りの菊池さんが、精一杯振り絞って述べた言葉には、重みがあった。
言われて気づいたけど、確かに、自分の事ばっかり考えて、相手の事も考えて、言いたい放題言っちゃったかも。
「確かに、そうだね。私も言い過ぎたかも。…難しいね、コミュニケーションって。」
静寂が戻る。
…ありがたいな。ちゃんと、自分の間違いを指摘してくれる人がそばにいる。
きっと、菊池さんがいなかったら、私、自己中心的な最低な人間になってたかもしれない。
「…ありがとう、菊池さん。」
私がそう言うと、菊池さんはまた首を小さく振った。
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