親友

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「そ、そういうもん?」 「うん。」 「じ、じゃあ、お言葉に甘えて…」 「あの!」 私が言い終わる前に、後ろから声が聞こえた。 「私も、一緒にいい…?」 声が震えている。ただ同級生に話しかけているだけなのに、そこまで緊張しなくても、と思うけど、過去に彼女をそこまで恐怖で染め上げる何かがあったのかと思うと、そうは言っていられない。 「「もちろん!」」 私は、絶対に菊池さんの心を開いてみせる!と、心に誓った。 □■□■ 「へーえ!橙花って写真とか好きなんだー!」 「うん。綺麗な景色とかあると、思わず撮っちゃうっていうか…。」 「俺、写真集とか結構見るの好き。今度橙花の写真も見せて。」 「あ、私も見たい!」 「う、うんっわかった!」 駅が一緒になり、だいぶ話が弾んで、親しくなれた気がする。2人とも、一見話とかできなさそうなのに、話しかけてみると意外と盛り上がれるタイプの人だった。 「じゃあ、私はここ左だから!」 「わかった。じゃあまた明日。」 「ま、またね、小紅ちゃん!」 「うん、またねー!」 元気に挨拶をする。でも、この元気さというのも、綾とつるんでいる時に身につけた性格であり、本当の自分ではない。まだ癖で、このキャラは抜けない。本当はもっと静かに過ごしていた。 あの二人なら、本当の私でもわかってくれるだろうか。あの二人といれば、本当の私に戻れるだろうか。 きっと…きっと大丈夫だ。 少しずつでいい。ゆっくりでいい。 2人と、心をゆるせる親友になれたらいいな。 「・・・。」 「・・・。」 沈黙が続く。だが、このまま家に帰る気はない。きちんと話を聞き出してみせる。 「おい、橙花。俺達、入学式の日の朝、校門で会ってるよな?」 すると橙花は、身体をビクッと震わせる。そして、暫くしてからゆっくりと頷いた。 「だよな。俺の勘違いじゃなくてよかった。」 「あの・・・。あの時は、ありがとう。」 俯きながらぽつりと呟いた。あぁ、こいつってきちんとお礼が言える子だったのか。 「別に。気にしなくてもいいよ。」 それに比べて、俺はこんな無愛想なことしか言えない。 それからは、二人共何も喋らなかった。 喋る必要はないと思ったから。 喋らなくても、橙花が横で歩いているだけで心地がよかった。
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