親友

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ちょっと、やめてほしいな、こういうの。 そっちは私のこと、完全に友達としか思ってないのかもしれないけど、私のとっては、まだ緑里が男子高校生なんだっていう感覚は抜けきれてないんだからさ。 「げ、ゴミじゃなかった。蜘蛛じゃんこれ。」 「はぁっ!!?マジで言ってんの!?」 私がベンチから飛び出す。恐怖でいっぱいの顔で緑里を見る。 すると緑里は、急に爆笑を始めた。 「ははははははははっ!!」 「ちょっと、なによ!騙したの!?」 「ははっ、ごめんごめん。こういうドッキリしたら、小紅はどんな反応するのかと思ってさ。」 緑里の明るい笑い声が廊下に響き渡る。 途端に恥ずかしさがこみ上げてきて、顔が赤くなる。 「まったく・・・。」 そう言って再びベンチに腰掛ける。 緑里があんなに笑ってるところ、初めて見た。 意外な一面が知れて嬉しいかも。 「ごめんね!待たせて。」 丁度、橙花がトイレから小走りで出てきた。 「全然!じゃあ急ごう!」 「うんっ」 そして私達は、移動教室の音楽室へ急いだ。 「えっ、マジで?あいつもう彼氏なんて作ったの?」 「さっきの子って、クラス替えの日に涙目で綾に縋ってた子じゃない?」 「そうそう、小紅っていうんだけどさ。あいつうっとおしかったから離れられて清々していたんだけどさ、急にあんなビッチになるとかありえないわ。」 「へ~え。どうすんの?」 「ちょっと調子乗ってるみたいだね。しめてやろうかな。」 「いいの?向こうはまだ、綾のこと友達だって思ってるかもしれないじゃん?」 「いいよ。私には友達は他にも山ほどいるし、小紅一人を潰したぐらいじゃどうってことないから。」 「そっか。それもそうだね。」 「じゃあ放課後、あんたも付き合ってくれる?美紀。」 「あいっさー。」
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