入学式

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教室に入ると、黒板に座席表が掲示されていた。自分の席を確認したあと、教室を見る。中にいる生徒の中には、見覚えのある顔が少しいたけど、この一年間全く関わってこなかったので、記憶が浅い。 私は1年間棒に振ってきた。そんなことに今になって気づく。 自分の席に着く。一番窓側の、後ろから二番目の席だ。 席の周りには知ってる顔はいなかった。 なのに、皆は既に輪を作り、ワイワイ騒いでいる。 去年から同じクラスだった人なのだろうか、それともさっき会ったばかりなのに、もう仲良くなった、とか。 別に、輪を作ってワイワイする事が偉いとか、そうしていない人が悪いとか、そんなことは思わない。だけど、少なからず浮く。―それはよく知っている。 落ち込んでいる暇はない!気持ちを切り替えて、私も友達を作る! もう自分を作ったりしない。ありのままの自分で!! まずは隣の人から話しかけてみよう…って、もう友達と話していて入りにくい。前の席の人は…立ち歩いてる。後ろの先の人は…まだ来てない。となると、あとは…斜め後ろ? 斜め後ろの席の人は、ボーッとしながら黒板を見ている男子だ。周りに人がいる気配もない。これはチャンス! 「ねえっ!これから、よろしくね。」 頑張って話しかける。第一声は、これで良かっただろうか。初めて話す相手は、この人で良かっただろうか。 その男子は私に気づき、私の方を見た。見られて気づいたけれど、こいつ、結構怖い雰囲気かも。 数秒じっと見つめた後、目線をそらしたあと、 「うん、よろしく。」 と呟いた。 お、意外と普通に話してくれるじゃん。 「うん!名前、なんていうの?私は、佐藤小紅。」 「俺は相川緑里。」 「へえ!女の子みたいな名前だね。」 「よく言われる。あんまり嬉しくない。」 「あはは。で、何を見てたの?」 「ほら、俺の隣の席の人、まだ来てないから。何でだろうって。」 隣の席を指でトントンと叩いて伝えた。 確かに、もう来ててもいい時間だと思うけど。 すると、チャイムが鳴った。一斉に立ち歩いていた生徒が着席し、クラス中が静寂に包まれる。 チャイムが鳴り終わったと同時に、教室のドアが開いた。 担任と思われる教師が入ってくる。が、見覚えのない少女も一緒に入室してきた。
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