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その少女は、腰まで長い黒髪を持ち、小柄で白い身体をしていた。前髪も後髪程長く、顔をよく見ることができない。
ざわざわと教室中が少し騒がしくなる。
「転校生を紹介する。」
教師がそう言うと、教室中の騒がしさが倍増する。
確かに、高校生になってから転校生なんていうのは珍しい。驚いてもおかしくない。私も一緒に騒ぐ仲間がいれば、騒いでいたところだ。
教師が黒板に生徒の名前を書き始める。クラス全員が静かになり、黒板を見つめる。
そして書き終わり、チョークを置く。黒板には、「菊池 橙夏」と書かれていた。その名前は、相川くんの隣の席の人の名前だ。
私は相川くんの方を見る。すると相川くんもこちらに気づき、うんうんと頷いていた。
「菊池 橙さんだ。皆、仲良くするように。菊池、皆に一言挨拶を。」
菊池さんは長い黒髪をビクッと震わせた後、一歩前に出て、「よろしくお願いします。」と小さく呟き、また後ろに戻った。
どうやら、極度の人見知りのようだ。
「じゃあ、菊池の席だな。お前の席は一番窓側の一番後ろだ。」
教師は私の後ろの席を指差しながら、菊池さんに指示をする。菊池さんはバッとその方向を見て、早歩きで席へと向かっていった。
菊池さんが着席したあと、私は頭を後ろに向けて、「よろしくね、菊池さん。」と挨拶をする。
菊池さんは、またビクッと体を震わせた後、小さくお辞儀をした。
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