入学式

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チャイムが鳴る。 「じゃあ休み時間だ。次のチャイムで入学式に向かうので、きちんと着席しておくように。」 そう言って教師は教室を後にした。 菊池さんか。いい友達になれるといいな。 よし、早速話しかけて仲良くなろう!友達第一号だ! そう思って振り返ると、私の手遅れで、沢山の女子が菊池さんの席を囲んでいた。 …おそるべし。 「おい。」 男子の声が私を呼ぶ。振り返ると、相川くんが私の席の前に立っていた。 「え、なに?」 「少しうるさいから、廊下で話そう。」 そう言って相川くんは、廊下に向かって歩き出した。 「ちょ、ちょっと待って!!」 □■□■ 相川くんについていき、廊下の奥の方にあるベンチに座る。 他の生徒は、新しいクラスの友達と教室で話しているのか、廊下にはあまり人がいない。 「えと、何かな?」 そう言うと、相川くんは私の方を見る。 「…えっと?」 「なんて呼べばいい?」 「え」 突然の呼び出しで、何言われるのか怖かったのに、その必要はなさそうだ。 「な、なーんだ。そんなことだったの?」 「言ったろ。教室うるさくなったから普通に話できないかと思って。」 「もしかして、仲良くなろうとしてくれてる…?」 おどおどと聞いてみる。もし勘違いなら恥ずかしいけど。 「うん。」 相川くんは、何の迷いもなくそう答えた。 相川くんは、真っ直ぐ私の目を見つめている。きっと、彼は嘘なんかついてない。彼は嘘をつける人じゃない。この目と表情を見たら、何となくそう思えた。 「あははははははははっ!!」 「え、どうした?俺なんかおかしいこと言った?」 相川くんはびっくりした表情を見せた。そんなところも素直だ。 さっきまで、本当の友達ができるのか心配だった。お互い本音を話し合える、そんな相手が見つかるのかどうかと。でも、相川くんはそんなこと、グダグダ考える人ではなさそう。全て、自分の意思で行動して、自分の意思で喜怒哀楽を表現してる。そんな当たり前のことを、私はできていなかった。私は今まで、綾に気に入ってもらえるように必死に自分を偽ってきた。外見、趣味、言動、全てにおいて、綾に合わせる生活をしていた。にも関わらず、綾には心を開いてもらえてなかった。相川くんは私と正反対で、自分を偽ったりしないで、ありのままの自分で生活してる。なのに私は、彼に心を開きたいと思った。
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