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ありのままの自分でいることが、相手の心を開かせるのに何より大切なことだったんだな、と気づいた。
「ううん、なんでもないよ!私のことは小紅って呼んでいいから。」
相川くんは首を傾げたままだが、「わかった。」と頷いた。
「じゃあ、俺の事は緑里って呼んで。」
「うん!」
お互い、いきなり下の名前で呼び合う。でも、私は全く気にしなかった。緑里はきっと、私の最初の親友なんだと思う。直感でわかる!運命の人、とは違う気がするけど、友達になりたいって、凄く思った。
高校に入って、初めてできた友達だ。
「あ、やっばい。次入学式じゃん!遅れたら担任に怒られそう。」
「そうだった。戻る?」
私は頷いて、二人で早歩きで教室に戻った。
□■□■
「何あれ、感じ悪!」
「いいよもう、放っておこう。」
女子がヒソヒソと悪口を言っている。高校2年生になって早々、何をそんなに怒っているのだろう?
あまり気にせず席に戻ると、そういえば菊池さんの周りの人が誰一人いなくなっていることに気がつく。
どうしてだろう、あんなに人に囲まれて人気者だったのに。
「菊池さん?」
後ろを向いて話しかける。すると、ビクッと身体を震わせた後、俯いてしまった。
どうしたんだろう。何かあったのかな。具合悪いとか…。
「ねえ、大丈夫…」
「じゃあ全員廊下に並べー」
話しかけ終える前に、教師からの指示があった。すると、菊池さんは立ち上がって廊下へ向かっていった。元気ならいいんだけど…。
□■□■
入学式が始まった。新しい制服を身にまとった新入生が入場してくる。盛大な拍手の中、背筋を伸ばしてしっかりと入場する新入生は、とても輝いて見えた。私たちが新入生だった頃も、先輩達からはこう見えていたんだろうか。
当時の私は、新しい高校生活の不安だけを考えていて、押しつぶされそうだった。でも、表には出さないようにして、精一杯優秀な新入生を振舞っていた。
2年生になってからだからよくわかる。この新入生だって、きっと新しい生活の恐怖でいっぱいなはずだ。
先輩となった私が、所々で力になれたら…と思う。
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