入学式

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校長の長い話が終わったあと、新入生代表がステージに上がり、作文を読み始めた。 去年は誰が読んでいたか忘れたが、今年の子は、小柄な黒髪の、如何にも優等生、という感じの男の子だ。 凄いなあ、と尊敬する。年下とは思えない。きっと彼は、私よりも沢山の努力を積み、この学校に入学したのだろう。生徒会長になったりするのだろうか。同じ学校に通う、年の近い同じ生徒であるのに、こうも人生は違うものだ。 新入生代表の男の子が作文を読み終わったあと、今日一番の拍手が彼に送られた。 □■□■ 入学式が終わり、下校時間となった。 入学式なんてどうでもいい、クラス替えで綾と離れたら地獄だって思ってきたのに、実際は色々な出会いや発見があって、濃い一日となった。 「佐藤さん、ちょっといい?」 振り返ると、さっき悪口を言っていた女子達が私の席を囲んでいた。 荷物を持って、女子達と校舎裏へ向かう。2年生初日なのに、なにこれ。 「菊池さんのことで話があるんけど。」 「菊池さんが、どうかしたの?」 「あの子、私たちが沢山話しかけてあげたのに、全部無視してきたの!調子乗ってると思わない?」 そんなことがあったのか。菊池さん…。確かに話すことは苦手そうだけど。 「菊池さんは…多分極度の人見知りだから、上手く会話が出来なかっただけだと思うけど。」 「はぁ!?会話どころじゃないって。無視してきたの!どんなに人見知りな奴でも返事ぐらいできるじゃん?普通!有り得ないから。折角話しかけてあげてるのに。」 まずい、気に障ったかな。どうしよう。確かにそうだねって、同調すれば話はすぐ終わりそうだな。よし… 「なに、それ。」 あ、あれ。 「話しかけてあげてるのにって…なんで上から目線?」 何言ってるの、私。そうだねって、言えば終わるのに。 「仲良くなりたいから話しかけるんじゃないの?どうして話しかけた方が上に立ってるって思うの?」 やめて、黙って私! 「そもそも、最初の挨拶の時点で菊池さんは人見知りっぽいってわからなかった?だったら、少しぐらいそういうとこ考慮してあげるべきじゃないわけ?確かに、無視されたらムカつくよ、普通。でも、あんなに震えてたんだからさ、言葉返すだけでも精一杯なんじゃないかな、普通。
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