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「ねえ……知ってる?
赤いランドセルを背負った幽霊が……」
チョコバナナを一口食べたマナが、「はーっ……お祭りと言ったらこれだよねー」と満足そうにため息を吐いたと思ったら、急に声を潜めて、顔色まで変えて耳打ちをしてきた。
「やだ、やだ!
嫌いなんだから、やめて、やめてよね」
神社の境内は屋台の照明がギラギラと眩しい位だし、参道はひとがごった返しているけれど、でもちょっと外れると夜の闇に溶け込んで、燈籠や何かが怪しくぎょっとするような影を作っている。
「つまんないなー。
最近ここら辺で見た人がいるって、噂でもちきりなんだよ?
レナだって知ってるんじゃない?」
「何を……知ってるって?」
怖い話なんて、聞きたくないのに、気になってしょうがない。
買ったたこ焼きを食べようと、通行止めになって歩行者で溢れる車道に出てきて縁石に座ったところだった。
「ここの道路、神社の境内を削って広げたでしょ?
その時、こんもりと山になってて、お稲荷さんか何か祀ってあったところもすっかり平にしてたでしょ?」
そうだ、今私達が座ってるこの場所はもともとは神社の敷地だったんだ。
鬱蒼と生い茂る木々に囲まれて、昼でも薄暗く見えた場所。
何も無いって自分に言い聞かせても、陰が、何か染みのように黒く暗く見えて怖くてしょうがなかった。
学校から家に帰る途中、どうしてもここを通るから、ある時すっかり平らにされたところを見て、ほっとした覚えがある。
「その時ね……
神社の宮司さんが慌てて隠したらしいって噂なんだけど
崩した山から
出て来たものがあるんだって……」
マナがニヤッと笑う。
背筋にゾクっと来て、やっぱり聞くんじゃ無かったと思うけど
それと幽霊とどう関係するの?とか
私が知ってるってなんの事なの?とか
どんどん不安になって来て、聞くのも怖いけど、やめるのも怖くてできない。
「な……何が……?」
「そこの蔵に、こっそり隠してあるって噂があるんだよ。
今日みたいににぎやかな日なら大丈夫だよ!
ねえ、一緒に見に行ってみない?」
「ちょ、ちょっと待ってマナ!
話が飛んでて分からないよ!
わざわざ見に行きたくないってば!」
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