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「ほんとレナっていっつもそう……
あの時だって……」
あの時……
工事が始まるらしいと誰かが言ってた、冬の始まり……
ランドセルから提げていた、大事なお守りが無いって気が付いて、どこに落としたんだろうって、マナと話しながら探していて……
神社を通りかかったのはもう、日も暮れて暗くなった時だった。
鬱蒼とした暗い築山はまだそこにあったけど、何かが足りないような、いつもと違う不安に襲われた。
大事なお守りを失くしたからだ。
当然だ。
その時
築山の前の、駐車場だったその場所に停めてあった車の陰から、誰かに「探してるのこれ?」と声を掛けられた。
学校で、変質者に用心するように言われていたのに、知らない男に嬉しそうに駆け寄ったマナ。
マナの手を握って引き留めようとしたのに、するっとすり抜けて行ってしまった。
その手をもう一度握ろうと追いすがった時……
キラッと光るナイフのようなものを見た気がした。
塀のすぐ向こうは車道で、車が忙しく行き交っていたけれど、恐怖で声も出ない。
その時突然、男の周りに黒い染みが見えて、それがマナの方まで……
私は逃げ出した。
あの時……
マナは後から何でもないような顔をして帰って来て、「ひどい!!」と怒っていたけど……
目の端に見えた、
あの、黒い染みがマナに、蛇のように絡みついた光景……
あんなの、私の目がおかしかっただけ…、怖がってるから、変なものが見えた気になってるだけ……
マナの笑う顔が時々怖い気がするなんて、気のせいに決まってる。
でも……
築山にあった小さな祠……
あの時もあっただろうか?
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