あおって世界に何色あるんだろうね

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昼飯を食べ終わると、次に眠気が俺を襲う。 左隣の、まだのほほんと飯を食っている男の存在を空気で感じながらも、俺はゆっくり目を閉じた。 今日はいつもより風がない。 ザワザワと鳴る枝も、今日は流れることができず泳げないでいる。 ここはまだ涼しいけれど、それでもじわじわと熱気が肌に食い込む。 そういや、隣のこいつは暑くねぇのかな。 俺とは違って暑がりではないみたいだったけど。 にしても、今日は一段に蒸し暑いな。 蝉の声が上から響くのが少し不快で、眉間に眉を寄せた。 立ち込める夏の匂いがまとわりつき、暑いながらも眠気は深くなる。 ああ、くらくらする。 この夏の匂いも、温度も。 全てが熱くて、頭の思考は鈍る一方だ。 鳴っていないはずの葉擦れの音が、耳の奥でザワザワと騒ぐ。 この熱、どっから来るんだろう。 風、吹かねぇかな。 あ、れ。 異変を感じてばっと瞼を開くと、目の前には静かな男の顔があった。 いつものにこにこした笑顔も、おちゃらけたしかめっ面もそこにはない。 ただ、その瞳は静かに熱が渦巻いていた。 「あつい、ね。」 ゆっくり、男が俺に手を伸ばす。 何故か俺の手はその腕を払いのけようとはせず、彼を受け入れた。 やめろ、と脳が指令を出してあるのにも関わらず、俺は彼と同じようにその整った顔に手を伸ばした。 うん。 あつい。 あつくて、くらくらして、頭がおかしい。 綺麗だな、なんて。 耳の奥で鳴っていたザワザワが、さらに強くなった。 それにつれて体の温度が、上がる。 俺はまだ違和感の残った自分の唇に手をあてながら口を開いた。
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