84人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はちらっとそいつの横顔をみて、すぐに視線を逸らした。
ああ、さっきまで涼しかったのに、風が止んだからだろうか。
またじりじりと、体が熱を持ち始める。
「あっち……。」
「えっ!? 暑い!? ここ普通に涼しいじゃん。」
「今は風止んでるだろ。」
「それでも十分涼しいけどなぁ。
あれかな、デカいと体温高くなるのかねー??
きみ身長どんぐらいよ??」
「知らん。」
「もー、会話の幅を広げようよー。」
うるせぇな。
ぎっと先程より強い目つきで睨むと、向こうも少しふてくされながらも引き下がった。
コンビニの袋を探り、焼きそばパンを剥いてかぶりつく。
むしゃむしゃと口を動かしながらボーッとどこともなく見つめる。
すると、風がやっと凪いで溜まった熱気を流してくれた。
肌を撫でられる感覚が気持ちよくて、思わず目を細める。
しかし、横からのしぶとい目線に根負けし、目だけそちらを見た。
「なんだよ。」
「お昼ってそれだけ??」
「まだある。」
「どれどれ……って、ええ!?
ちょ、焼きそばパン5本入ってるんだけど!?」
「やらんぞ。」
「いや、いらないけどさぁ……。
それ飽きねぇ?? しかも体に悪いじゃん。
せっかく若くてイイ男なんだから、ちゃんと肌ツルツルになるようなモノ食べなよ。」
「選ぶの面倒くさいんだよ。」
「ぶはっ、いやいや、それはさすがに横着しすぎっしょ!!」
あははっと隣の男が笑い出した。
なにがそんなにツボったのか、腹まで抱えている。
俺は無視してただもくもくとパンを口に運ぶ。
やっと笑いが収まった男が顔を上げると、目には涙が溜まっている。
それを指で拭いながら、はーっと息をついた。
「久しぶりにこんな笑ったよ。
きみ面白いね!!」
堪えきれないのか、まだその声は震えている。
最初のコメントを投稿しよう!