プロローグ

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プロローグ

かつて・・・この世界は危機に満ちていた・・・。 遡ること50余年前、突如として海底より出現した謎の存在。 人間たちによって『深海棲艦』と呼ばれたそれによって、既存の艦艇は、鉄屑同然と化した。 深海棲艦は人間たちの居住する沿岸を攻撃し、船舶を沈め始めた。 各国がその時団結していれば、彼らに勝利の可能性は残っていた、しかし彼らはそれをしなかった。 最初に出現したのはベーリング海中心部、この海域に近接する国家はアメリカとロシア、しかしこの二国は互いに自国の面子を保つことに固執し、独力を以ってこれを排除しようとした。しかしこれが間違いであった。 総攻撃は両国共に5次に渡り行われ全て失敗、損失率8割と言う惨敗を喫した。 この報に接した世界各国は驚愕した。初めはアメリカとロシアが行くならと安心していたのだ。しかしそれが為す術も無く潰滅したのであれば無理もない。 そして次に出現したのは大西洋の欧州側、ポルトガル西方700kmの海域であった。 面子をかなぐり捨て、EUとアメリカ、南米諸国にアフリカ諸国は大連合を組んで総攻撃に臨んだ。 しかし、人間達からしてみれば全く以て不可解な生態を持つ深海棲艦の変幻自在の猛攻を前に彼ら敗走し、人類は深海棲艦に対し抵抗する力を失った。 人類はこの二度の敗北によって、西太平洋の一隅を除く全海洋の制海権を喪失、それは川すら遡り湖であろうと同様であった。 だが人間達のその諦めの悪いことは、いつの時代でも同じであった。 人類は残された陸上兵力と、僅かに残存した海軍戦力を結集して決死の反攻作戦を全世界で敢行し、全湖畔と河川から、深海棲艦を放逐する事に成功した。 しかしその代償として人類総人口が3割も減少、さらに世界的な荒廃に見舞われたことにより、人類にそれ以上の攻勢を仕掛ける事は叶わなかった。 結果的に言えば人類は守勢に立たされ、彼らがこの状況を打破しない限り、最終的に人類が死に絶え滅び去ってしまうというところまで来てしまった。これは戦略的大敗北としか言い様が無い。 しかし、天は我々人類に深海棲艦という試練を与えたとはいえ、決して人類を見捨てなかった。 2050年前後から人類の前に救世主のように現れたのが、かつて東洋の新興国であった『大日本帝国』が生み出した艦艇の魂を受け継ぐ存在、『艦娘』であった。
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