プロローグ

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彼らは人類がどれだけ研究しても掴む事の出来なかった、深海棲艦への対抗策と、それを倒すに足る力を持っていた。 彼女らの集まった日本国は、幸運にも自衛戦闘を継続し得たアジア諸国の支援と協力を得て、政府はそれら艦娘を指揮する独立軍事組織『大本営』を設け、その下に直接指揮を執る『鎮守府』を設置、鎮守府が統括する『艦隊司令部』を多数設け、指揮官として『提督』と呼ばれる者達を大量雇用した。 2052年、こうして人類にとって2度目となる、深海棲艦との戦争が始まった。序盤こそ、圧倒的に数で勝る深海棲艦の勢い凄まじく、被害に比して得る所少なく、艦隊司令部施設自体にもかなりの被害が出た。 だが徐々にその生態が明らかとなるにつれて、艦娘艦隊は形勢を逆転、徐々に深海棲艦側から意志と良識を持つ者が人間側に与したことによって、敵対的深海棲艦はその数を減らし、最初の交戦から19年、最後の棲地、北極棲地への総攻撃によって、敵対的深海棲艦は全滅した。 残った友好的深海棲艦の勢力は人類側との共存の道を取り、戦争は終結した。 そう、それがちょうど31年前であった。 しかし、この本を取った皆さんはご存知であろうか。 この一連の戦争の陰で暗躍していた艦隊があったことを・・・。 一司令部であるにも拘らずその設備と技術、権限や単純な実力すら鎮守府に匹敵した裏の実力者達。 であるにも拘らず表舞台に出ることは無く、ただひたすら陰で暗躍し、深海棲艦を撃滅して行った艦隊があったことを・・・。 政府のブラックボックスとして固くその存在を秘匿され続け、大本営の艦籍名簿・・・いや、裏艦籍名簿として記された彼女達とそれを指揮した4人の提督達。 今回この本を記した私はその存在を知ってから5年に渡る交渉の末、その極秘情報の一つを掴んだ。 元政府官僚のさるやんごとなき方の許可を得た私は、そのお方の根回しを得て、この記録を、いや、正しくは『伝記』と呼ぶべきか、その取材と執筆を始め、今日皆様にお目にかかる事と相成ったという次第である。 出来ればこの本が世の中の人々の目に触れ、この事実を、伝説と呼ぶに相応しいこの艦隊の活躍の事実を、世間一般の人達に知ってもらい、また信じてもらいたいと、そう願っている。 数多の棲地を屠り、数多の超兵器級深海棲艦を海の藻屑と化した、彼と、彼女達の艦隊、その名は『横須賀鎮守府付属近衛第4艦隊』。
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