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親元を離れ塔で暮らすというのは12歳前後の子供にはつらいことだろう。少しでも少年達の寂しさが紛らわせるように気を使いながらウェルナーは案内を続けた。
2階層から4階層は全て1年から6年生までの講義教室がずらりと並んでいる。今は夜なので誰もいないが午前中から午後にかけて、自分が担当する呪文学を初め、一般教養、薬草学、考古学、魔法戦術、計略指揮を6人の教授が生徒達に教えていた。
5階層は売店と食堂そして医務室、6階層から8階層は学生寮となっていた。
「9階層から上は教授達の研究室と自室になっています。僕は11階層にいますので、何かあれば僕の自室にきてください。また、教養の授業で学ぶことにもなりますが、聖魔協定によって”学びの塔”に聖騎士が常駐していますので、彼らに失礼の無いように。1年時に必要な呪文書や着替え、生活用品などは全て寮の自室にありますので、明日の時間割を確認しながら今日はゆっくりと休んでください。では、解散にします。」
一通り説明を終え、6階層で3人を6学年の寮長に引渡す。後は彼が世話をしてくれるだろうと思い、ウェルナーは11時の階段から自分の部屋を目指した。
9階層と10階層の二つの階層を教授や職員、事務員など複数の人間によって使われているのに対して、11階層と12階層は丸々一つの層がそれぞれ一人の魔法使いによって使われていた。
11階層は自分、12階層は塔の主ヘヴィングである。
他の魔法使いと違い外に出ることを禁じられている自分の暮らしが少しでも良くなるようにというヘヴィングなりの配慮だったのだろうが、他の教授からしてみれば次の”学びの塔”の主はウェルナーだと言っているように感じられているようで、逆に肩身の狭い思いをすることになっている。それでも味方の少ない自分にとって、ヘヴィングの優しさにはいつも助けられていた。
そんなことを考えながら歩いていると。
ふと、ウェルナーは自分の自室の前に人がいるのに気がついた。
警戒しながらウェルナーが扉に近づくと、その人物は扉に寄りかかりながら腕組をし眠っているようだった。蝋燭の明かりに照らされて赤毛が燃え上がっている。よくよく目を凝らすと先ほど迷子になっていた聖騎士の青年だった。
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