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 講義室のある部屋のドアをウェルナーが開くと、おしゃべりに興じていた3人の見習い魔法使いが一斉にウェルナーを見た。早く魔法の勉強をしたいという意気込みが感じられウェルナーも嬉しくなる。ジェスだけが何度も手で首を触っているのを見て少し気になった。寝違えたのだろうか。  「おはようございます。みなさん昨日はよく眠れましたか。」  「「「はい、先生。」」」  「それでは今日から呪文学について僕と一緒に勉強していきましょう。理論や倫理など知らなくてはならないことがたくさんありますが、まず実際に簡単な魔法を使ってみましょうか。習うより慣れたほうが早いこともあります。杖を構えてください。」  教卓についたウェルナーは、3人が杖を取り出し構えたのを見ると呪文の言葉を口に出した。ウェルナー自身は杖は持っていないので、指先を杖に見立てて指揮者のように振ってみる。  「”魔の杖よ”」  ウェルナーの指から眩い光の塊が生まれた。空中をふよふよと魔力の塊が浮かんでいる。始めは白かった光は、やがて赤、青、黄のマナの力を受け交互に色が変化していった。  「初級魔法の一つで照明の魔法です。簡単な魔法ですが日々の生活から洞窟探検など幅広い場面で活躍してくれる便利な魔法なので、今日中に覚えられるようにしてください。では、やってみてください。」  ウェルナーの合図とともにジェス、ダレク、レナの3人が杖を振る。  現状どのくらい3人が魔法についての知識があるか。それを調べるために、あえてコツなどの説明はしなかった。  「難しいな。」  悪戦苦闘をしながらジェスが杖を力強く振る横で、ダレクが綺麗な球体の光の塊を出して見せた。レナも見よう見真似で呪文の言葉を呟くが、杖の先が光るだけで魔力の球を放出することはできなかった。  「ダレクすごい。」  レナに褒められて得意げになるダレクにジェスが苛立つのがわかった。そして3人の中ではダレクが一番マナの扱いに長けているようだ。  「くそう、もう1回だ。」  ジェスが杖をもう一度力強く振るうと、小さな火の玉が飛び出しウェルナーに向かって衝突した。  レナの悲鳴が聞こえる。普通の人間が食らっていたら焼けどではすまない良い魔法だとウェルナーは感心した。そんなことを思える余裕があるのはウェルナーが普通では無いからである。
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