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 ジェスの出した火の玉は、ウェルナーのマナで編んだ鎧”障壁”によって完全に防がれていた。  3人を落ち着かせるためそんなに慌てなくても大丈夫だと言おうとした矢先に、ジェスが教室から外に出て走り去っていく。彼の顔には恐怖が浮かんでいた。 「先生、大丈夫なんですか。」    ダレクとレナが駆け寄ってじろじろとウェルナーの顔を見たが、どこにも怪我の跡は無いだろう。毎年見習いに魔法を教えているが、こういう事故はつきものである  「ほら、ウェルナー先生は大丈夫だったろ。」  ぽんぽんと背を叩きジェスの耳にアレックスが囁く。恐る恐る近づこうとするウェルナーに、涙を浮かべながらジェスは体当たりをした。年齢は一回り違うが体型はほとんど変わらなかったので、吹き飛ばされそうになりながら、ウェルナーはなんとか少年を支えた。もちろん障壁で少年が怪我をしないように、力は弱めていた。  「先生、よかった・・・。俺またやっちまったかと思って・・・。」  嗚咽でうまくしゃべれないジェスに変わりアレックスが話をする。  「どうやらこいつは怒りが引き金で魔力が暴発してしまうらしい。ここに連れてこられる前にも、それが原因で友人に怪我をさせてしまい、それが一種の心的外傷になっている。」  そういうことかとアレックスの話を聞いて納得した。ほんのちょっとの感情の高ぶりにマナが反応してしまい、それが引き金で魔力の暴走が起こる生徒は多数いる。  「ジェス聞いてくれ。」  真面目な表情になり泣いているジェスの肩に手を乗せる。膝を折り曲げジェスと同じ目線に立つと、思考をまとめて言葉を紡いだ。  「僕も昔、魔力を暴発させてとんでもない過ちを犯したことがある。でもそれから色々考えてね。逃げてちゃ駄目だってことに気がついたんだ。僕達魔法使いは、精霊・・・。いや、魔法からはどうしたって逃げることはできない。だからこそ、それを受け入れ、向き合うことが必要なんじゃないかな。」  「どうやって・・・向き合えば・・・?」  「今回の場合だったら、逃げるんじゃなくて、傷つけてしまった人に謝る。これが魔法と向き合う第一歩かな。そしてこれからの勉学に勤しむ。この学校でマナのコントロールの仕方を学べば、魔法の暴発は起こらなくなる。それは僕が保障する。」    
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