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 目をこすり涙を拭ったジェスが僕を見る。  「ごめんなさい。」  まっすぐ紳士に間違いを認めた少年の頭をウェルナーは撫でた。その光景を見ていたアレックスが何か考え込むように腕を組んだ。  「どうかしましたか。」  教室に戻る途中アレックスのことが気になり尋ねてみる。いつに無く真剣な表情をしている。ちょっと出すぎたことをしたかと心配になった。  「いや、おまえ。すごい色々考えてるなぁって思って。」  非難しているのでは無く、アレックスは感心していたようだった。それならと、ちょっと偉そうな態度をとってみる。アレックスがいると、何故だかいつもよりハイテンションになってしまう自分がいた。  「これでも5年ほど先生やらせてもらってますから。」  「5年か、何歳なんだ?」  「今年で23歳になります。」  「23歳?俺より1個下なだけなのか。・・・ウェルナー。」  「はい?」  「おまえなんで敬語なんだよ。俺にはため口にしとけとか言っておいて。」  「あ・・・癖で。」  「職業病って怖いな。おまえも今度から敬語は無しな。」  他愛の無いお喋りをしながら部屋に戻ると、レナとダレクがジェスのもとに駆け寄ってきた。二人も心配していたのだろう。少し話をさせてあげたいとも思ったが授業中だったのを思い出す。  「ジェス君、もう一度照明の魔法使ってみてください。息を吸ってマナを取り込み、体から腕へ、腕から指先、そして杖にむけて魔力が流れていくイメージです。」  ぽんと手を叩き3人の注意を授業へと引き戻す。アレックスは教室へと入ることはなく、教室の扉の前で立っているようだった。  もしかしてさっきも居たのか。  偶然会ったのかと思ったがもしかしたらジェスを追いかけてくれたのかもしれない。それと同時に、扉の前まで近づかれても気づかないことにウェルナーは驚いていた。  僕に気配を悟らせないとは。  「”魔の杖よ”」  ジェスの呪文がウェルナーを思考から現実にもどす。  光の玉が杖から生まれ、綺麗に空中で輝いていた。  「やった~。」  ダレクが自分のことのように喜び、レナが拍手をした。  「よくできました。」  ウェルナーも賞賛を送ると、ジェスはほっとしたように肩の力を抜いた。授業の続きをしようとしたウェルナーの耳に授業の終わりをつげる鐘の音が鳴り響く。  
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