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 「ふむ、難しい質問だな。情勢ってことでいいなら、俺達の住んでいるアリスター地方は教皇領で絶対不可侵。そのおかげで”宗教戦争”の後は平和な日々が続いている。他の地域は、親魔派のレナード男爵と対魔派のグレイグ男爵が小競り合いを起こしているって聞いたことはある。」  「レナード男爵とグレイグ男爵か。二つの男爵領は地理的にもこの塔を挟むように位置しているから魔法使いとしても人事とは言えないね。教皇は変わっても、人の心はすぐには変えられないか。また戦争前のように、魔法使いも平和に暮らせる日が来るのだろうか。」  「そうだな。すぐには解決しない話だろう。でも安心しろ、おまえの安全は俺達リベラルが保障する。」  「そうか、なら安全だ。」  「信じてないだろ。」  疑うような目でウェルナーを睨むアレックスに顔を逸らす。  「別に疑ってるわけじゃないし、気持ちはすごい嬉しいけど。協会が介入するのは相当なことだろう。ましてや魔法使いのためになんて・・・。もう10年近く監視されてるからなぁ。ちょっと諦めかけてるよ。」  「・・・拳を出せ。」  言われるままに拳を出すと、手の甲にアレックスは軽く口漬けをした。  顔が真っ赤になるのがわかる。民間で伝わっている指きりのような聖騎士流の約束の仕方だと書物で呼んだことがあったが、こんなに唐突にされるとは思わなかったからだ。  「聖騎士に二言は無い。」  そう言ったアレックスの横顔はとてもかっこよかった。思わず見とれていると怪訝そうな顔でアレックスがこちらを見返す。  「先生ご一緒してもいいでしょうか。」  お弁当を一通り食べ終わり、紅茶を飲んで食休憩をしていた二人のもとに、教え子のレナがやってきた。随分と遅い昼食である。もしかしたら迷ったのかもしれない。  レナの背後からジェスとダレクも、両抱えの弁当を持って彼女についてくる。女性に荷物を持たせないところが子供ながらに紳士的だった。  レジャーシートを増やし彼女達が座れるようにすると、紅茶を3人にも振舞った。  「わあ、これナマル村の特産品のニュート茶葉じゃないですか。私のお父さんも好きで良く仕入れにいってました。」
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