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「詳しいですね。僕も紅茶には目が無いんです。この紅茶は私と、薬草学の教授との合作で、寒さに強い作物を作って欲しいとレナード男爵に頼まれまして、その研究をしていた過程でできたのです。」
説明しながらあらかじめ”リベラル”から提示されていた生徒達の入学書類の中に、レナの両親が商人だったことが記載されていたのを思い出した。
「うちはレナード男爵の兵士だからなぁ。しかもただの門番。紅茶なんて初めて飲んだぞ。」
なるほどその勝気な性格は父親譲りなのか。半ば納得したようにウェルナーは頷いた。
「ダレク君の両親は両方とも魔法使いでしたっけ。今は何をしていらっしゃるのですか。」
「この学校で学んだ薬学の知識で医者をやっています。」
この塔で学んだことを生かす。とても羨ましいことだ。自分は外に出れたら何をやっていたんだろう。同期の3人の友人はそれぞれ、鍛冶師、医者、闇商人になったと聞いている。さすがに闇商人になるのは嫌だが、もしかしたら外に出ても先生をやっていたのかもしれない。
「皆さんは、将来何になりたいですか。」
ふと気になりウェルナーは、教え子達に尋ねてみた。
「私はどこか大きな街で喫茶店を開きたいです。」
ウェルナーの質問に最初に答えたのはレナだった。
なるほど女性らしい可愛い夢だとウェルナーは思う。宗教戦争が終わった数年は、研究職などあまり人とはかかわりの無い職業が人気だったと記憶しているが、最近では魔法使いだからやる仕事以外にも興味を示す学生が増えてきているようだ。
もしかしたら自分が思うよりも、魔法使いへの負の感情が軽減されてきており、子供達の性格にも影響してきているのかもしれない。
「俺は騎士になりたいな。だってカッコいいじゃん。」
「騎士の道は険しいぞ。」
ジェスの言葉にアレックスが茶々を入れる。アレックスは魔法使いが騎士を目指すという考えを否定することはしなかった。やはり少し変わっているなぁと思う。
ジェスの夢にウェルナーは少し心配をしていた。果たして魔法使いを召抱えてくれる貴族がいるのだろうかという心配である。こうやって聖騎士と魔法使いがしゃべっていることですら、本当に奇妙なことなのだ。
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