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「ミルド大陸では国王が存在しておりません。各々の領地を男爵たちが守り、年に数回行われる会議で、税や他の大陸への貿易問題などを解決しているようですね。自分が仕えたい人間は誰なのか、それを間違えないようにしてください。」
ウェルナーの言っていることがわからなかったのか、少年は首をかしげて考え込んだ。今はまだカッコいいという理由で決め手もいいだろう。だが騎士ともなれば人の命に携わることのにもなる。そのことを考えて欲しかったのだが、ジェスにはまだ早かったようだ。
「ダレクは何になりたいのかしら。やっぱりお医者さん?」
「僕はまだわかんないや。”色分の儀”で黄色に血が染まっていれば、簡単に医者にもなれたんだろうけど・・・。」
「昨日の夜の話ね。先生、ダレクから3色のマナについて少し聞いたのですが、3色のマナはそれぞれどんなことができるのでしょうか。」
レナの疑問にウェルナーが答える。魔法使いの息子がいることが、レナの知識欲を刺激しているようだった。
「赤は燃焼、青は抵抗、黄は活性を司っています。平たく言ってしまえば、赤は攻撃魔法が得意で、青は補助魔法が得意、そして黄色は回復魔法が得意です。黄色が医者というのは、そういうことですね。青は考え方次第で何でもできますよ。」
そこまで説明した所で、レナがある疑問を口に出した。
「先生は何色のマナを操れるのですか。黒いローブを着ていらっしゃいますが・・・。」
普通の魔法使いならば、赤か青か黄のどれかのローブを着ている。それがウェルナーは黒いローブを着ているのだ。疑問に思うのも無理は無い。
どう説明しようかと迷っていると、ふとケロベロスの森から大量の鳥が北へ向かって去っていくのが見えた。まるで何かから逃げている。そんな慌しさだった。
森の様子がおかしい。
10年近くこの塔で暮らしていたウェルナーはいち早くその異常に気がついた。
「何か来るな・・・。」
アレックスも立ち上がり剣の柄に手をかける。何も感じていない3人の見習い達は、アレックスとウェルナーの真剣な表情に不安そうに顔を見合わせた。
木々が折れる轟音が響く。森の中から現れたのは1本の巨大な大樹だった。人型の体をしたそれは、2速歩行で塔を目指し歩いてくる。
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