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 「ヨ・シキイセ・ルス・ヲ・マャジ・ゼナ」  古代樹がくぐもった声をあげるのを見て注意を聖騎士達から大樹へと向けた。体を傷つけられようやく理性がもどってきたようだった。  「ウェルナー何て言っている?」  アリス教授に聖騎士を任せ、アレックスの元へと向かうとそんなことを尋ねられた。  「何故邪魔をするのかって言ってる。」  「まずは何故怒っているか話を聞きたい。そう伝えてくれるか。」  アレックスの言葉をそのまま通訳する。  古代語をしゃべる自分よりも数倍小さな人間に、古代樹は顔を近づけた。アレックスは警戒したが、大丈夫だとウェルナーはよく自分の姿が見えるように近づく。  「おお、誰かと思えばウェルナーか。相も変わらず小さくて気づかんかった。」  「ご無沙汰しております。”大地の幹”様。お怒りの原因はまた”フラウ”でしょうか。度々申し訳なく思います。7年前に私が見つけていなければ、こんなことには・・・。」  「いや、フラウの発見はわしらにとっても有益じゃったよ。おかげで、森に巣食う寄生虫の問題も解決できたしのぉ。ただ今回わしらの間で決めたはずの契約を、蔑ろにするような輩がこの塔にいるようでな。こうやって講義にきたわけじゃ。」  大樹の話を翻訳しながら、アレックスに契約の内容を伝えた。  大樹との契約は発見者である自分以外が、フラウの出荷に携わらないこと。出荷するフラウに幼木を含めないことの2点だけだった。  要はおまえに任せると言われているようなものなのだが。そんな取り決めになったのも”大樹の幹”とお茶を飲むような間柄だからである。  十年もこの場所から出られない自分を”大樹の幹”は心配してくれていた。  「話はわかりましたが、いささかやりすぎではないでしょうか。ここは学びの場。罪の無い子供たちも過ごしているのです。理性無く門を叩かれては困ってしまいます。」  「盗まれたフラウの幼木については私達が調べます~。あなた様にとっては赤子をとられたのと同じ怒りなのだとわかりますが~、この場はお怒りを静めくださいです~。」  ウェルナーの言葉に、いつの間にかやってきたのかアリス教授も続く。それに対しアレックスも言葉を重ねた。  
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