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大樹の腕が塔の外壁や正門を叩く度に、そこから数十メートルは離れている塔の内部に轟音が響いた。見たことの無い魔法生物を前にジェスとダレクは興奮していたが、レナは恐ろしさのあまりうまく体を動かすことができなかった。
塔のエントランスは中に避難しようとする魔法使い達であふれている。どうやらジェスと同じように興奮している生徒は少ないようだ。教授達が押さないように指示を飛ばしているが、我先にと子供達は逃げ惑い。塔の中に逃げる魔法使い達に、次第にレナは流されていった。
「ジェス~。ダレク~。」
必死に二人の名前を呼ぶが返事は無い。
魔法使いになる素質を持っている人間はそれほど多くは無い。といっても塔の中には魔法使いは100人位はいるようにレナの目に映った。お昼時で外へ出ていた人間が多かったために、塔の入り口での混雑を回避できず、いつの間にか二人とわかれてしまった。
「ここは何層なのかしら。」
あたりを見渡すが塔の内装はどこも同じに見える。
真っ赤な絨毯、壁には同じ間隔で蝋燭や壁画が並び、ギミックを解除しないとどこに部屋の位置口があるかわからない。
こんなことならウェルナー先生の案内をしっかりと聞いておくべきだったと、レナは後悔した。
「ふう・・・。なん・・目的・・・は手に入れた。」
途方に暮れていたレナの耳が男の声を聞き取った。
声のするほうへ向かうと、ギミックが解除され扉が開け放たれている部屋を見つけることができた。
失礼だとは思ったがこのままでは部屋にも戻れない。こっそり部屋の中を覗くと、”色分の儀”でウェルナーに咳払いをした男がいた。
恐らく教授だろう。そう思い、レナは道を尋ねようとした。
「そこにいるのは誰だ。」
突然の怒声とともにレナの体が宙に浮いた。
ノックをしようとした扉と反対側の外壁へと体が叩きつけられる。背中を強打したことで、口から息が漏れた。
「う~む。これはこれは。おまえはウェルナーの担当の見習いじゃないか。あったばかりの子供を手駒にするとは・・・。何らかの魔法でもかかっているのか。」
「何の話でしょうか。私は道に迷っただけで。」
「嘘をつくな。奴の差し金だろう。何か嗅ぎつけたのだな。」
男が何を言っているのかレナにはさっぱりわからなかったが、大層慌てているようにみえた。
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