IV

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 「どうするべきか。計画に支障がでてしまうな。せっかく地位が手に入れられるというのに、こんなところで躓くわけにはいかんな。」  男が迫ってくることに身の危険を感じ、レナはこの場を離れようした。しかし動けない。どんなに体に力をいれても魔法の力で拘束されているのか、壁に張り付いたまま動けなかった。  「レナを放せ。変態野郎。」  男がレナに触れようとした時、聞きなれた声が廊下に木霊した。  それと同時に、男に向かって炎が放たれる。午前の授業の時にウェルナー先生にもぶつけてしまった、ジェスの炎だった。  「レナ、今のうちに逃げよう。」  ダレクがレナの元に駆け寄る。少年に手を引っぱられたが、それでもレナは壁から動けなかった。  「ダメなの。力を入れても一歩も動けないの。」  「拘束の魔法かな?針、錐、鍬。」  素早くダレクが呪文の言葉を呟くとレナの拘束が解除された。こんな時ではあるがダレクの知識の多さにレナは舌を巻いた。両親が魔法使いだからか、自分たちよりもダレクは色々な魔法を知っている。  「見習い風情が。」  男の怒声に三人の見習いはびくりと肩を震わせた。  ウェルナー先生の時とは違い、男の顔には火傷の跡がついていた。  「やべっ、ウェルナー先生は効かなかったのに。」  ジェスは純粋に驚いた表情を浮かべていた。ウェルナー先生に自分の魔法が全く効かなかったことから、この男にも自分の魔法は効かないと思っていたのだろう。牽制程度の攻撃が燃え盛る火に、さらに火を注いだような結果になってしまった。  ジェスの言葉で男はプライドを傷つけられたのかさらに激昂した。  「我が名シャーク・ティースの名において海底の書を開く。」  シャークと名乗った男がローブの中から一冊の本を取り出した。男の言葉とともに本が空中を漂い始め、自動でページをめくり始める。魔法について勉強したのは今日が始めてだったが、青のマナが本に吸い込まれていくのが肌で感じ取れた。  「げ、あれは。」  ダレクが何かに気づいたのか慌てだす。その反応でレナは確信した。やはり自分が感じたようにとてもまずいものらしい。  「なんだかわかんねえけど、やばそうな気がする。逃げるぞ二人とも。」  少し遅れてジェスがマナの異常に気がつきダレクと自分の手を無理やりひっぱった。
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