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呪文の詠唱に入り始めたシャークを無視し3人が下層へと走り出す。シャーク自身が追ってくる気配はなかったが、その呪文を唱える声は下の階層へと降りても3人の耳に響いていた。
「なんだよこれ、逃げられないのか。」
ジェスが走りながらも不安そうな声を出す。
「さっきみたいに何か対抗する魔法とかは無いの?」
「あの人、精霊の本を開いていた。あれは精霊と自分だけのオリジナルスペルがかかれた本なんだ。つまり教科書とかで乗ってる魔法じゃないから・・・、わかんない。」
「わかんないなら、最初からそう言え。おまえの話は長いんだよ。」
「せっかく人が説明してるのに、ジェスは・・・。」
シャークの声が突然聞こえなくなり3人は喋るのをやめた。
先ほどまで鳴っていた大樹が扉を叩く音では無い。何か別の音が背後から聞こえてきていた。
3人は足を止め。今まで走ってきた方向をおそるおそる振り返る。
少年少女の視界に映ったのは、大量の水が意思を持ってこちらに向かって流れてくる光景だった。その勢いはまるで雨の日に氾濫した川の流れのようだ。見習い達を飲み込もうと迫ってくる。
「おや、三人ともそんなに急いでどこに行くのですか。」
間の抜けた声とともに、黒いローブを着た少年が3人に微笑みかけた。あの魔法生物を倒したのだろうか。何事も無かったように3人の進行方向に佇んでいる。とてもそうは見えないが、もしかしたらすごい魔法使いなのかもしれない。
「先生、前々。」
ジェスが咄嗟にウェルナーに向かって助けを求めた。
ウェルナー先生も3人を襲おうとしている水に気づき。3人をかばう様に素早く前に立つ。
「落ちた剣よりいでし、戦場の守り手よ」
空気中に青のマナが湧き出し水のように視覚化した。その水はぐるぐると渦を巻き、シャーク教授の魔法と衝突すると、最初から何もなかったかのように彼の魔法を打ち消した。
「おお、魔法だ。やっぱいいなぁ魔法。綺麗だよな、きらきらしてて。」
聖騎士がそんなことを言いながら、慣れなれしくウェルナー先生に近づいた。ウェルナー先生の方も嬉しそうに話すので、レナは内心の苛立ちを隠せなかった。聖騎士と魔法使いが仲良くすることに苛立っているわけでは無いことが、尚更彼女の心をかき乱す。
ウェルナー先生は3人に何があったか聞かなかった。
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