第1章 学びの塔

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 厳粛な雰囲気の中進んでいく儀式の中で、ふとウェルナーは自分の”色分の儀”のことを思い出していた。”色分の儀”とはその名の通り、自分にふさわしい色のマナを血から分離することで見分ける方法である。  この”アルヴァース”の世界にはマナと呼ばれるごくごく微小の粒子が存在しており、それは特性によって赤、青、黄の3つの色に分類できる。  この3つの色のマナを操れる人間を、魔法使いと人は呼ぶ。  また稀にはではあるが本来1種類しか持たないはずの粒子を操る素質を複数持つ人間がいた。今”彩色の儀”を執り行っているヘヴィングしかり、ウェルナー自身もその一人である。  もっともその稀有な素質のために卒業できるほどの学問を修めても塔の外から出ることはできず、自分は教授をやらされているのだが。  「ふぉっふぉっふぉ、お主は黄色のようじゃな。わしも黄色のマナを操る素質をもっておる。では最後にジェス・ロバート。」  気の強そうな少年が前に進み出る。  先の二人と同じように血を垂らすと今度は水が真っ赤に染まった。この子は赤色の素質を持っていたようだ。ちなみにヘヴィング教授は赤と黄色の二つの粒子を操る素質を持っている。橙色のローブを着ているのはその二つを操れることを示すためのものだった。  「これで”色分の儀”を閉式とする。お主ら新人の魔法使い達に、竜の加護がありますように。」  ヘヴィング教授の後に続き他の教授達も退席する。  大広間の中に残ったのは自分と3人の見習い魔法使いだけだった。  「今年は3人か。」  ウェルナーが3人に聞こえない程度の声で呟き、一人一人を確認する。顔や体に怪我は無いようだ、精神的にも緊張しているだけで問題はなさそうに見える。聖騎士達は今年も丁重に生徒たちを護送してくれたようだ。  「”学びの塔”にようこそ。僕はこれから君達の直属の先生になるウェルナー・D・ザイドです。講義などは別の先生の授業も受けることになるとは思いますが、身の回りのことで困ったことがあればまず僕に相談してください。専門は呪文学で、1年から最終学年である6年生まで全ての授業を受け持っています。そちらの質問や魔法についての質問があればそれも遠慮なく質問してください。」  3人のもとに近づきながらウェルナーが軽く自己紹介をした。  すると勝気そうな少年が疑いの目を向けてくる。先ほど赤の適正を受けた少年だ。
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