第1章 学びの塔

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 「おまえ本当に先生なのかよ。どう見ても俺らとそんなに年が離れてるようには見えないぞ。」  「おまえ・・・。おまえではなく、ウェルナー先生と呼んでください。ジェス君、確かに背は小さいですし、顔も若くは見られますが、これでも23歳ですよ。こらこら皆さんそんなに驚かないでください。」  「15歳位かと思ってました・・・。」  おそるおそるダレクが口に出す。子供達は正直者だなと思う反面、的を射ている感想に内心賛辞を送っていた。  ウェルナーの体はとある事情から15歳の体から成長が止まっていた。その事情は自分が黒いローブを着ていることに関係してくるのだがそれをこの場で話すつもりは無い。  「先生のことは置いておいて。明日からすぐに授業が始まるので、軽くこの塔を回ってみましょうか。塔は迷路のように入り組んでいて扉をあけるには特定のギミックを解除しなくてはなりません。合言葉や特殊な動作がこの塔ではカギのような役割を果たしています。また勉強をしている上級生の生徒さんや、危険な実験をしていて神経をすり減らしている教授達がいらっしゃいますので、皆さん静かについてきてくださいね。」  ウェルナーが注意をすると3人の見習いはこくりと頷いた。ウェルナーに連れられた見習い達が恐る恐るといった様子で少年の後についてくる。その感じが初々しかった。  ”大広間”を囲むように”第一の廊”と呼ばれる円形の長い廊下が走っていた。  この廊下は北を12とし時計に記載されている数字と同じ場所で、その数字と同じ階層まで登れる階段が走っている。12ならば1から12までどの階層にも上ることができ、逆に3ならば3階層までしか登ることができない。  また1の場所には上に登る階段ではなく地下への階段がある。  敵からの侵入を受けても守れるように太古の昔から受け継がれてきた蔵書の数々は、この地下1階の図書館に保管されていた。度々訪れる卒業した魔法使い達もこの図書館に保管されている本を目当てに訪れることが多い。  というようなことを説明しながら徐々に上の階層へとあがっていく。  彼らの目はこれからの塔生活への期待で輝いていた。静かにしなさいと注意してはいたが、自分が説明するよりも早く次のフロアーに走って行き、勝手に部屋を開けては中にいた先輩魔法使いに怒られ自分のもとへと戻ってくる。
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