coffee

2/2
前へ
/4ページ
次へ
 無駄高いドリップコーヒーを片手にカタカタと、私の欠片を打ち込んでいく。  高校生になったら、最新型のノートパソコンかってあげる。だから、それまで携帯を解約するわね。  なんて、母の言葉に釣られて携帯を手放したから、大好きな小説を書く場所がなくなってフラストレーションをくすぶらせていた中学生時代。  高校生になり、その欲求を与えられたノートパソコンに爆発させたら、それがナントカ賞をとって。  作品はすぐさま書籍化されてベストセラーになった。  期待の新人  吉田桜子 とか、なんとか、私の周りは騒がしくなった。  それから  取材、テレビ出演、作品のドラマ化や映画化とかをしてみないかって、物凄い量の人が訪ねてくる。    自分の顔を出すことはしなかったものの、今までのシンプルな生活が一転し、色とりどりのゴチャゴチャとしたものが増えていった。 私の小説を読む人もそれに比例した。 そして、嫉妬ややっかみなのか。 つまらない。おもしろくない。くだらない。 だのなんだの。 そんな感想も増えた。 小説を書くのは楽しい。 苦しくなることも、 涙がでることもあるけど、 そうやって出来た私の作品たちは、私の欠片だ。 魂を削って作品を造り上げているんだ。 愛しい、大切な作品たちなんだ。 カタカタ 今日は筆が進むな。 なんて、冷めたコーヒーを飲みながら思う。 私はまだ子供だ。 厚い鎧を着て誰だかわからない 丸裸な子供だ。 守られてばかりの、弱い子供。 そんな私は、強い大人になりたくて。 精一杯の背伸びをする。 ああ、にっがいコーヒー。            【完】
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加