1人が本棚に入れています
本棚に追加
無駄高いドリップコーヒーを片手にカタカタと、私の欠片を打ち込んでいく。
高校生になったら、最新型のノートパソコンかってあげる。だから、それまで携帯を解約するわね。
なんて、母の言葉に釣られて携帯を手放したから、大好きな小説を書く場所がなくなってフラストレーションをくすぶらせていた中学生時代。
高校生になり、その欲求を与えられたノートパソコンに爆発させたら、それがナントカ賞をとって。
作品はすぐさま書籍化されてベストセラーになった。
期待の新人
吉田桜子
とか、なんとか、私の周りは騒がしくなった。
それから
取材、テレビ出演、作品のドラマ化や映画化とかをしてみないかって、物凄い量の人が訪ねてくる。
自分の顔を出すことはしなかったものの、今までのシンプルな生活が一転し、色とりどりのゴチャゴチャとしたものが増えていった。
私の小説を読む人もそれに比例した。
そして、嫉妬ややっかみなのか。
つまらない。おもしろくない。くだらない。
だのなんだの。
そんな感想も増えた。
小説を書くのは楽しい。
苦しくなることも、
涙がでることもあるけど、
そうやって出来た私の作品たちは、私の欠片だ。
魂を削って作品を造り上げているんだ。
愛しい、大切な作品たちなんだ。
カタカタ
今日は筆が進むな。
なんて、冷めたコーヒーを飲みながら思う。
私はまだ子供だ。
厚い鎧を着て誰だかわからない
丸裸な子供だ。
守られてばかりの、弱い子供。
そんな私は、強い大人になりたくて。
精一杯の背伸びをする。
ああ、にっがいコーヒー。
【完】
最初のコメントを投稿しよう!