跪いて愛を舐めろ

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 お気に入りの紅茶には角切りの林檎が沈んでいて、灰色のひとり掛けソファーはわたしの重みを受け止めてくれている。  かろんかろん、こきゅり。  冷えた香りがわたしの高揚を落ち着かせてくれる。  アンティークの壁掛け時計は午後十一時を回っていて、秒を刻む音が心地良い。  こち、こち、こち、こち。  まるでメトロノームのようにわたしの心音を落ち着かせてくれる。  ここはわたしのマンションで、わたしの部屋で、わたしの好きな物が集まる場所。 子供の頃から夢に見てきたお気に入りの場所だ。 それなのにわたしの足は一向に揺すりを止めてくれない。 足を組んだ方の爪先が、ゆらゆら、と上を向いたり、前を向いたり。 パールベージュのペディキュアが控えめに艶めく。  さて、そろそろ一時間になる。 恋人の彼がわたしの前に、フローリングの床に正座してから。
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