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まだ陽も暮れていなく、明るい時間だったので「ひとりで帰宅できます!」と強く訴えたのだが、彼はなぜだか断固として「ダメ、ゼッタイ!」と言って貫き通し、背後から見え隠れする謎のオーラもとい、圧力に圧倒されてしまい、それ以上勝てないと覚ったわたしは、彼のお言葉に甘えて、自宅まで送ってもらうことにした。
自宅までの道のりを案内しながら、彼との会話を楽しみつつ歩くと、自宅が見えてきた。
「――――苑宮君。自宅がもう、すぐそこの家だから、送ってもらうのはここまででいいよ」
「……わかった。榎波、また明日な」
彼とわかれる前にお礼を告げてから、頭を下げる。わたしは彼の背中が見えなくなるまで見送ると、玄関の扉を開けて靴を脱ぎ、室内へ上がる。
リビングにいるであろう母へ挨拶を済ませてから、二階へ続く階段を上がり、自室を目指す。自室へ到着し、扉を開けて室内へ入ると真っ先に、制服のままダブルサイズのベッドへダイブする。
「今日は一日大変だったなぁ――――」
ベッドへ仰向けになり天井を眺めながら一日を振り返る。
転入生に苑宮君に翻弄されたり、多数の女子から妬みを買ったりと、今まで体験したことのない出来事ばかりで、表情から疲労困憊の色が伺える。
一通り振り返る作業を終えると、ベッドから起き上がり、制服から私服へと着替える。
着替えを終えると通学鞄からスマートフォンを取り出し、食事の時間までメールやメッセージの確認をする。すると、陽花より早く麻那がメッセージアプリから、苑宮との関係性など如何にも恋愛の噂話が大好きな麻那は、校舎案内はどうだった、など、ぐいぐいと攻めに攻めて質問してきた。食事の時間までまだ時間がかかりそうなので、時間の許す限り懇切丁寧に説明し、送信ボタンをタップする。
文字を打つにあたり、親指を酷使してしまったので、暫し休憩していると、一階にいる母親に呼ばれた。どうやら晩御飯の時間らしい。
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