【 02 歪な想いと一方通行な告白 】

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彼が転入してきて数週間が経過した。人気も初日に比べて安定し、他クラスから彼を見に来る女子生徒数も初日と比較すれば、だいぶ人数は減ってきている。  四月も下旬になり、ゴールデンウィークへの日数がカウントされるに従い、親友である麻那のテンションも上昇傾向にある。  そんなある日の放課後、麻那に誘われて、駅前にオープンしたケーキバイキングのお店へ行こうと二人ではしゃいでいたのだが、わたしは麻那へ先に行ってもらうことにした。  二人とも部活動に所属していなく、アルバイトもしていない。ただ直帰するのは悲しいので、たまに麻那と予定が合えば、放課後一緒に出掛けたりしている。  今回はなぜ、麻那を先に行かせたかと言うと――――――。 「ねぇ、君ってたしか、九条君……だったよね?」 「そうだけど……苑宮みたいな奴が、僕に用件でもあるの?」 「いや……君となら親友になれそうな気がして」 「……………え?」  祐眞君が驚くのも無理ないよ。彼は転入初日にハーレムを築いて以降、クラスの男子を敵に回してしまった。いや、男子が苑宮君へ敵対している。が正解だろう。  そんな二人の行く末を見守るために、麻那には先に行ってもらったが、何とも言えない空気が二人の周りを漂っている。  そんな空気の中、先手を打ったのは祐眞君だった。 「僕なんかで良ければ、苑宮と親友になるよ」 「九条?感謝する!!」  心から笑っているのか、彼は両手で祐眞君の手を握り締め、嬉しそうに輝かしい程の笑顔で喜びを表現していた。  その光景にわたしも喜んで見つめていると不意に、祐眞君と目が合う。 「あれ……陽花?仁藤と帰ったのかと思ったのだけど、まだ教室にいたのか」  祐眞君の言葉にわたしと彼は驚き、今度は彼と目が合ってしまった。 「九条……榎波とはどのようなご関係で?」 「ただの、幼馴染み。それ以上でもそれ以下でもない」  幼馴染み――――というと、少々語弊が生じるが、強ち間違ってもいないので、どうやって話せばいいか困ってしまう。 「でも、お互い中学生になってからは、自然と疎遠になったよね?」  幼馴染みとこうやって話すのは久し振りすぎて、言葉が詰まる。 「ただの幼馴染み……ね。二人の関係性は何となく理解した」  言葉では納得されたみたいだが、表情はイマイチ、納得していないように伺える。
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