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そんな二人の行く末を見守るために、麻那には先に行ってもらったが、何とも言えない空気が二人の周りを漂っている。
そんな空気の中、先手を打ったのは祐眞君だった。
「僕なんかで良ければ、苑宮と親友になるよ」
「九条?感謝する!!」
心から笑っているのか、彼は両手で祐眞君の手を握り締め、嬉しそうに輝かしい程の笑顔で喜びを表現していた。
その光景にわたしも喜んで見つめていると不意に、祐眞君と目が合う。
「あれ……陽花?仁藤と帰ったのかと思ったのだけど、まだ教室にいたのか」
祐眞君の言葉にわたしと彼は驚き、今度は彼と目が合ってしまった。
「九条……榎波とはどのようなご関係で?」
「ただの、幼馴染み。それ以上でもそれ以下でもない」
幼馴染み――――というと、少々語弊が生じるが、強ち間違ってもいないので、どうやって話せばいいか困ってしまう。
「でも、お互い中学生になってからは、自然と疎遠になったよね?」
幼馴染みとこうやって話すのは久し振りすぎて、言葉が詰まる。
「ただの幼馴染み……ね。二人の関係性は何となく理解した」
言葉では納得されたみたいだが、表情はイマイチ、納得していないように伺える。
「ところで榎波。俺たちとここで話していて大丈夫か?仁藤を待たせているのだろう」
――――見られていた?!
確かに麻那を昇降口で待たせているが、彼に見られていたとは知らなくて驚く。
「あ……うん。では、二人ともまた明日!」
二人のことが気になるが、これ以上麻那を待たせることはできないので、わたしは慌てて昇降口へと向かう。
「上手く誤魔化したな?」
祐眞は泪を睨みつけるようにして追及する。
「さて……何のことだかさっぱり見当つかないね」
泪は祐眞の追及を、のらりくらりと、飄々とした態度ではぐらかす。
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