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「───陽花!」
並んで歩く麻那が、声を掛けてきた。
「どうしたの、麻那?」
「転入生の話、聞いた?」
「転入生?」
「今日、あたしたちのクラスに、転入生が入るらしいのよ。しかも男子!」
「へー」
興味がないのか、そっけなく答える。
「へーじゃないわよ!イケメンだったら早めに近付かないと後々大変でしょう?」
後々大変になる意味がわからないのか、陽花の頭上には疑問符が浮かび上がっている。
高校の近辺にも桜の樹木が幾つも植えられている。その桜を眺めながら登校すると、春が訪れたのだな、と改めて実感させられた。
麻那の転入生に対する力説は昇降口まで続き、外履きから内履きへと履き替えてからやっと、静かになる。
教室へ到着する頃には転入生の話題から、駅前に新しくオープンした、ケーキバイキング店の話題へと変わっていた。
「ほら、あたしの言ったとおりになったでしょう?」
「いや、でも……何で女子は、ひとりの転入生の話で、あんなに盛り上がれるの?!」
1限目が終了し、10分間の休み時間になると、麻那はドヤ顔をして勝ち誇った様子で真っ先に、陽花の席へとやってきた。
麻那がなぜ、ドヤ顔で勝ち誇った表情なのかは、一時間前のSHRまで遡り───。
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