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「麻那は今から、あの大群の中へ行こうとしているの?」
「いいえ!」
1限目が終了し、現在に至る。彼は予想以上に女子に囲まれており、中には噂を聞きつけて来た他のクラスの女子も数名混じっていて、すぐにハーレムが出来あがった。
「昼休みと放課後を狙うのよ!昼休みなら時間も長いし、校舎案内もできるでしょう?」
「苑宮君に断られたらどうするの?」
「その時はその時よ!!」
麻那のその、前向きな心意気にわたしは心服する。
休み時間の度に女子の数が増えていくのを横目で感じながら、午前の授業は滞りなく終了した。
麻那は授業が終わると同時に有言実行すべく、苑宮君の席へと向かい、早速話しかける。
「苑宮君!一緒に昼休みをすごさない?よければ校舎案内もするよ!」
苑宮君は考える素振りを見せると、誰かを捜す様に視線を彷徨わせており、その様子を見守っていたわたしと目が合う。
「君の気持ちは嬉しいけど……先客がいてね?」
椅子から立ち上がると突然歩きだし、そのままわたしの席へとやってきて肩に手を置かれる。
「昼休みは彼女とすごす予定があるから、また誘ってほしいな」
痛い、痛い。こんなにも妬みの含んだ女子の視線を感じた経験がないので、胃がキリキリと痛む。
「わたし、そんな予定は―――」
「―――ね?」
有無を言わさぬ彼の威圧的な笑顔に圧倒され、わたしは断ることができなかった。
屋上に行きたいと言われたので屋上へ向かい、到着すると、昼休みなので生徒で賑わっている。
天を仰ぐと雲ひとつない快晴で、わたしの心とは真逆だった。
「あの……わたし、苑宮君と約束していないよね?」
どうして彼はこんなことをしたのか真実が知りたいので、真っ先に質問する。すると彼は、近くのベンチへと腰かけてから、淡々と理由を説明された。
「理由?そんなの簡単さ。君が騒がしくなさそうな女性だから」
何となく予想はしていたが、騒がしくなさそうな女子ならわたし以外にもいたはずだ。だからどうして、嘘をついてまで私を選んだのだろうか。
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