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「君は外見からして、自己主張が強くなさそうだし、群がってくる女子たちとは明らかに違う雰囲気だったから」
彼は話し終えるのと同時にふわり、と柔らかく微笑んだ。
「君を選んだ理由はそれぐらいだからさ、そろそろ食事にしない?」
彼の言葉とともに、わたしは教室から持ってきたトートバッグの中から、バンダナで包まれた二段重ねの弁当箱を取り出し、膝上で包みを広げる。
「それって手作り弁当ってやつ?」
わたしはゆっくり縦に頷くと、早速蓋を開けて箸を取り出す。
だがそこでふと、麻那のことを思い出したので、トートバッグ内からスマートフォンを取り出す。メッセージアプリを起動させてから、長文にわたっての謝罪文を考え、送信ボタンをタップする。
「あ、そうだ。君の連絡先教えてよ?」
わたしがスマートフォンを取り出したからか、理由は解らないが、わたしみたいな地味な女の連絡先を知りたがるとは想ってもいなかったので、少々戸惑ってしまう。
「そ、それは本気ですか?!」
「────うん。本気だけど?」
本気と言われて戸惑うが、こんなチャンス次いつ現れるか解らないので、わたしは悩んだ末に、連絡先を教えることにした。
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