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「メッセージアプリの方までありがとう。後でメッセージ送るから」
あまり期待はしていないが、彼はそう言ってくれたので、気長に待つことにした。
そしてやっと、食事にありつく。
「イマドキの女子高生ってさ、榎波みたいに料理が上手いのか?」
「どうだろう?わたしは毎日料理する訳ではないし、自分ではあまり上手とは想ってないから難しいな」
彼は納得いかない表情だったが、わたしのお弁当の中身を見ると再び笑顔になり、得意の玉子焼きを真っ先に食べられてしまった。
「あ……この玉子焼き、甘くない。しかも明太子がはいっている」
「甘くない玉子焼き、苦手だった?わたし、甘い卵焼きはあまり好きじゃなくて。明太子は玉子焼きと良く合うからたまにいれるの」
玉子焼きで気付くが、彼はお弁当か何か持ってきたのか気になり、それとなく質問する。
「あの、苑宮君。お弁当やパンとか、何か持ってきた?」
「何も持ってきてない。朝、急いでいて忘れていた」
「それならわたしのお弁当、食べる?量が少ないから足りないかもしれないけど、味は保証するから」
彼は最初戸惑っていたが、おかずに惹かれたのか、縦に頷いてくれた。
わたしはお弁当の蓋にご飯半分と玉子焼き、から揚げ、ポテトサラダなどのおかずを、ご飯の隣に添えてから手渡した。
「箸はこれしかないのだけど……大丈夫かな?」
「俺はそのようなこと気にしないタイプだから大丈夫。気を遣わせてしまって悪いな」
彼が気にしないタイプで安心する一方、自分以外にお弁当を食べてもらう機会がなかったので、口に合うかなど色々と考えてしまう。
だが、その考えは彼の表情などを見て、払拭された。余程空腹だったのか、全て食べてくれて、「美味かったと」お礼の言葉もいただいた。
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