散り逝く

2/7
前へ
/9ページ
次へ
 ひらりはらり。  はらりひらり。  巡る季節の中で咲き散る花は、どんな意味を持つのだろうか。乗せた言ノ葉は、意味がない。見た者や感じた者の中にだけ芽生えていく。  花を愛で、飲み交わす人々がざわめきながら、頬を緩めた。美しい、と感じる心が淡い花の散り際を見上げている。  愛しい、愛しい。  美しく、儚い花の最期。  花に魅せられた少女が伸ばした手の先で、花びらはその身をふるりと震わせた。  掌から逃げた花びらは、風に乗って舞い上がる。そして、はらはらと黒髪に降り落ちていく。風と踊る薄桃の吹雪に視界が揺らいだ。  祖父母が愛した桜は、写真で見たように立派で、話に聞いたように美しい。  笑顔で見上げた先にある景色を優しく眺め、少女は開き始めたばかりの花の蕾に目を止める。  くう、と小さく鳴いたお腹に「桜餅が食べたい」と呟いて、儚い踊りを見終わると彼女は両親のいる場所へ駆け出した。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加