ep.3.5 朝の風景

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「浮気してるとき。」 隆の声が俺の耳に低く響いた。 「浮気って…」 顔が強張る。鼻がぴくぴくする。 口が渇く。手が固まる。 断言しよう。 私、斉藤了は、隆と付き合って約2年近くになりますが、 決して浮気をしたことはありません。 敬語なんですけど、これは本当なんです。 沈黙が、重い沈黙が続く。 こんなにも怖いものだとは知らなかったな。 しかし、その空気を変えてくれたのは、他でもない隆自身だった。 「なあんてね。冗談だよ。鎌かけてみちゃった。」 そう言ってにこっと笑った隆に、何か違和感を感じてしまったのは何でだろう。 「りょうさんが浮気しないのは、俺が一番知ってるから。 あと、お酒入っている時はしないし、あんなにしつこくもしないよ。 それに、俺が、りょうさんにいろいろされたいってこと、知ってるでしょ?」 もうそろそろ大学に行かなきゃいけないんだけど、 なんでそんなに誘うような、 なんで今にも欲しそうな顔するんだよ。 「それから、俺が、お前を見る度にどうやってイカせるかって考えてることも、知ってるんだろ?」 「そんなこと、思ってたの?知らない、そんなの知らないよ。」 そう言って照れる隆の顔が赤くて、 今にも触れたかった衝動に駆られたが、 遅刻寸前の現実に戻る準備をした、そんな朝の風景だった。 to be continued...
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加