遅延

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遅延

脳髄の芯に居着く 重く、粘着性のある疲れが 視神経と同期して波打っている 頭蓋骨を支える 唯一の その一本脚の頸椎によって フラミンゴの我慢強さを 体現させて眠りについたのか 間欠的な眠りの中では どうにかすると  逃げ出してしまいたくなる 終いには帰る道すら忘れてしまう 蝶の舞う花畑に身を寄せて マーガレットの白い花弁を 物知り顔で慈しんでいたりする 不安はない 飛び立つことに 躊躇いはない 夢の 不連続な 夢の その疲れによって 侵食された虫食いの穴に のぞき見る私の願望は 殊に 制止を望んで 叫びつつある 同時に 骨伝導する春の匂いを 視界の片隅で懐かしんでは 私は夢に溺れ 悲しみに沈み 特に感知しない奥底の 最も疑い深い命を ひょっこり 曲げてしまうだろう 残る声の 嘘の境界に立つものの歌よ 何も断定出来ない様に 震えてしまえばいい ゆっくり そして ゆっくり また ゆっくりと
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