煩い奴ら

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苦笑の一つでもしてやろうと思ったが、フラフラとわんこ先輩の背後に近寄る影を見て、思わず息を飲み駆け出した。 「うわぁああぁぁあ!!!」 男は切羽詰った声をあげ、わんこ先輩へサバイバルナイフを振りかざす。 反応しきれなかったわんこ先輩を押しのけ、俺はそのナイフの刃を掴み取ると勢い良く男の頭に回し蹴りを決め吹っ飛ばしてしまい、思わず声が漏れた。 「やべっ、力加減ミスった。」 気絶してるであろう男へ小さく合掌をすると、先輩へ振り返り大丈夫かと聞こうとした途端サバイバルナイフを握り締めていた手を掴まれ、口をパクパクさせながら涙を浮かべた目でこちらを見つめてくる。 「大丈夫っすよ、ほら。」 刃の部分を握り締めていたので、血が出ていると思ったのだろう。だが残念、勢い良く叩きつけられるように受け止めたので少し赤くはなっているが、全くの無傷だ。 「へ、な、んで……、?」 俺の手のひらを撫でながら、不思議そうに眺めているわんこ先輩へ、奪い取ったサバイバルナイフを見せる。 が、分からないようで首をかしげてナイフを見つめているわんこ先輩が少し微笑ましくなって笑ってしまった。 「見ててください」 手は離してくれ無さそうなので、ナイフを手首に当てスッと横へ撫でる。 「ももちゃ、っ!……??」 思わず焦り俺の手を掴んで止めたが手首から血がたれないことにまた首をかしげた。 「偽物……?」 「いやこれは本物っす。ただ刃を潰してあるので切れないんだと。まあ打撃は痛いっすけどね。」 さっき感じた違和感はやはりこれだった。半信半疑だったがこんな茶番に本物持ってきてたら大事故起こしかねないしな。 当たってて良かったよ痛いけど。 赤くなっている左手が次第にジンジンし出す。 わんこ先輩に撫でられこしょばゆいのもあるが、いつになったら手を離してくれるのだろうか。というか 「わんこ先輩は気を抜きすぎっす。茶番だと分かってても相手に背を向けちゃいけません。」 「……ん、ごめ……。」 「分かればいいんすよ。」 そろそろ離してくれないだろうかと思いながら笑えば、そこにあの黒髪の人が声をあげた。 「そこまで!!」 その言葉で組手を行っていた会長サマたちや双子が犯人を離す。 そして屋上に鳴り響くファンファーレ。 もう何がなんだか分からないよ。
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