37【少年】追憶

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今から、六年前の五月八日の晩……。 その少年の姉が、 ススキノに有る『焼肉屋とら丸』付近の路上で、 何者かの手によって刺殺された…。 彼女は、少年にとって、 本当に自慢の姉であった。 姉は、少年よりも六つ年上…歳は離れていたが、 少年にとっては、一緒にいると安心できる大切な存在だった。 その姉が、 刺殺され、帰らぬ人となったのだ。 当時、少年は14歳…中学二年生であった。 そして、姉は20歳…大学二年生であった。 姉は、ススキノのとある喫茶店でアルバイトをしていた。 ある日の晩… 彼女から「アルバイトが終わった後に大学の友達と会うから、帰りは遅くなる」と、家に連絡が入り、その日、姉はそのまま家に帰って来なかった。 そして、 その日の晩…。 姉の遺体が、 ススキノで発見されたのである。 姉の死を知らされた父と母は、悲しみのどん底に叩き込まれた。 それは、少年も同様だった。 姉の死を知った、その次の日…。 少年は、家の近所の川べりに行き そこで大声で泣いた。 悲しかった…。 悔しかった…。 実は… 少年には姉を殺した犯人について 心当たりが有ったのだ。 生前、姉は「ある男に、しつこく付きまとわれてる事」を少年に打ち明けていたのである。 何でも、ソイツはよほど姉の事を気に入ったらしく、 姉が嫌がるのもお構い無しに、何度もしつこく電話をかけて来て、 それを姉が拒否すると 今度は姉がいる大学に密かに押しかけて来たと言う。 姉は、 「あまり、周りの人に心配かけたくないから、この事は内緒にしておいてね」と、少年に口止めをし、少年もそれに従った。 そして少年は、 「ストーカー野郎なんて無視し続けてれば、そのうちに諦めるよ」と、姉の話をあまり真剣には、取り合わなかった。 そして… 彼女は、殺された……。
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