37【少年】追憶

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少年は、川べりに座って泣き続けた。 「俺が…俺がっ!! あの時、姉ちゃんの話をもっと真剣に聞いていれば!姉ちゃんは、死なずに済んだかもしれない! 俺は!姉ちゃんを守ってやれなかった!」 いくら泣いても、少年の涙は止まらなかった。 と、 「ここに、いたのか…」 不意に、男の声が聞こえた。 少年が声がした方を見ると、一人の青年が立っていた。 その人は、 姉が高校時代に空手部のマネージャーをしていた時の元部員で、 高校を卒業した後は姉とは別の進路に進んだ。 しかし、その後も時々、この青年も含め他の元部員達が姉と会っている事を少年は知っていた。 実は、少年も時々、その人達に遊び相手をしてもらっていたのだ。 そして、 その皆が、少年とその家族と一緒に、姉の死を悲しんでくれた。 …何でも卒業後、彼らは皆、それぞれ様々な職業についたと聞いている。 普通の会社員は元より、警察官、武道家、タクシードライバー、弁護士、など… 中には、サーカス団の団員になった者もいるらしい。 この人は… どんな職業の人だっただろうか…。 「お前…姉ちゃんのカタキをとりたいか?」 と、その青年は少年に聞いてきた。 少年が頷くと、 「よし。俺がカタキをとってやる。だから、お前は復讐など考えないで、姉ちゃんの分まで、しっかり強く生きろ」 と、言って去って行った。 あれから、 六年の月日が経ち… 少年も20歳になった。 あの川べりの一件以来、 あの青年とは会っていない。 「今頃…あの人は、元気にしてるだろうか」 と、今でも時々、 その事を考える時が有るのである…。
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